シチリアが好きでボローニャから移動、友人やらの助けと、ここで勉強したいという気持ちから、気がつけば11年もこの場所に住んでいます。パレルモは古い街並みが残る歴史地区があって、たくさんの博物館や美術館、さらに遺跡の一部が日常のくらしと溶け合って、街そのものが博物館のよう。さらに少し街を離れれば、美しい自然に恵まれ、とても魅力的な場所でした。しかし昔よく冗談で”パレルモ人がいなくなれば、もっと良い街になるのに”というのがより深刻なものとなりました。
もともといろいろゆるい街で、日本の厳しい社会に息が詰まっていた私は、ほぼ逃避行でこの街にいきつきました。ついたころは、このちょっとルーズなところが面白くもあり、肩の力をぬいて、のんびりすることができました。
しかしここ数年、色々な有名人がシチリア島にやってきて、広告をしたせいで、メガツーリズムの島になりました。もともときちんとしたサービスなどができるレベルの島民ではないため、旅行者をただのドル箱と思い、悪質なサービスと品質で高額のレシートをさらっと渡してきます。
街に住んでいる住人にもそのとばっちりは半端なく、行きつけのバールでもないところにいけば、とんでもない額を請求されます。
いわゆるメイン通りは(via maqueda)同じような飲食店がならび、まるでピンサロの客引きかのように通行人の邪魔をします。道路からはみだした店には、客引きのため料理が何時間も放置され、食い気より吐き気をもよおします。
道路沿いにあるゴミ箱はいつもパンパン、収まりきれないものは外に放置され、これまた暑い太陽の光で、悪臭を放っています。友人は携帯を見ながら歩いていたら、ゴミ袋に足をひっかけ転び、サラリーマンはビシっとスーツを着こなしながらも、家の前で山のようなゴミ袋をかきわけながら歩いているのは滑稽です。大通りにはへたくそな歌手やバンドが大音量で音楽をかき鳴らし、そのわきでは浮浪者が寝ているか薬を吸っています。
これは日中の話です。夜になると別の地獄がまっています。
夜の11時頃から、広場という広場は違法ディスコの巣窟に変わります。大型アンプを設置し、安酒をうり、ドラッグをうり、視点が定まらないひとたちが踊り、飲み、叫びます。これが朝の6時頃まで6月から10月までほぼ毎日、続きます。2023の夏には女性のレイプ事件に発展しましたが、数週間静かになっただけで、あとはもとの木闇です。一応、法規制で深夜にお酒を売ってはいけないことになっているので、もちろんパブはある程度の時間には閉まります。そうすると、行き場の失った酔っ払いは人の家の前で立ちしょんべんをします。人間のおしっこがこんなに臭いのかとはじめて知ることになったのもこの街です。
多くのBandBが実はこのエリアに立っています!
謳い文句は歴史地区の風靡なエリア、中心街に住むのは魅力的。だいたいこのような文句です。しかしこのエリアにホテルを借りたなら、寝られない苦しさからすぐに別のホテルを探すことになるでしょう。
つまり住人が暮らせなくなった歴史地区も、旅行者なら数日で帰るからいだろうという勝手な理由で、この現状をふせて貸しています。
では、海に行けば落ち着くのかと思えば、海辺も騒音の渦です。砂浜の海の家も趣味の悪いディスコソングを鳴らし、会話ができないほどのボリュームです。さらに数年前からゴムボートにアンプを乗せて走る姿も。静かな海はもう見つかりません。
私は、なぜ日本でパレルモがまだこのような部分を隠しとおし、”リゾートの都”的に報告されているのか全くわかりません。
旅行者の方には現段階では(2024年6月)、シチリア島なら、滞在はパレルモ以外の街にいかれることをおすすめします。